(1)税理士法人について

税理士法人という言葉を聞いたことがあっても、その役割については漠然としたイメージしか持っていない人も多いでしょう。

その背景として考えられるのは、法人としての役割が少しずつ変化していることです。

所属する税理士の担当業務に関して一昔前とは違っている点が増えてきました。

以前メインで行っていたのはクライアントの記帳を代わりに行うことです。

取引をして収入を得るとそれ合わせて税金を納めなければなりません。

企業であれば法人税が課税されますし、個人事業主であれば所得税を支払われなければなりません。

その他にも住民税や個人事業税などもありますが、いずれにせよ、その課税額の算出のベースになるのは事業の収支です。

日々の売上や経費をしっかり帳簿に残していかないと、正確に算出するのは困難になってしまいます。

具体的には取引があるたびに、さまざまな勘定科目に当てはめて仕訳をする必要があるのです。

帳簿には仕訳帳のほかに、現金出納帳や総勘定元帳など多様な種類があります。

会計の素人の場合、それぞれの帳簿の持つ意味を把握することさえ難しいでしょう。

ましてや1円の狂いもなく記帳していくのは非常にハードルが高いことです。

小規模な個人事業主であれば、市販の会計ソフトを使用すれば不可能ではありません。

しかし、青色申告で税制面の優遇を受けたいなら、厳密な会計原則の則った複式簿記で記帳する必要があります。

たとえ会計ソフトを使っていても、その知識が皆無だとやはり厳しいと感じやすいです。

会計の業務に追われてしまうと、本業を行う時間が取れなくなってビジネスが成立しなくなる恐れがあります。

そのような事態を招かないようにするため、記帳の代行を依頼するクライアントがたくさんいたのです。

 

(2)クライアント自身で完結させるケースが増えている

また、クライアント自身が会計のシステムに入力して、それを税理士がチェックするという方式もあります。

定期的に監査を行って誤っている点がないか調べ、最終的に確定申告書や決算報告書の作成につなげるといった具合です。

もちろん現在も上記の業務のウエイトは大きいのが一般的です。

もはや業務のベースになっているといっても過言ではありません。

以前と大きく異なるのは、それだけを行っていたのでは税理士法人としてのニーズは低くなってしまうことです。

世の中の情勢はいろいろな面で縛りが多くなってきました。

経営者の立場ならそれを十分に考慮して事業を展開していかなければなりません。

毎年多くの事業者が誕生しますが、それと同時に多くの事業者が廃業しています。

数年後にも残っている可能性は決して高くないのが実情です。

それだけビジネスシーンは過酷な状況にあるのですから、できるだけ有力な味方が欲しいと考えるのは当然でしょう。

その味方としてもっとも期待できるのは、法律的な観点から企業の資金の仕組みを熟知している税理士といえます。

そのため、クライアントが税理士法人に期待するのも単なる記帳の代行ではなくなってきます。

参考→「日本クレアス税理士法人」などの税理士法人に依頼できるサービス

 

(3)税理士法人がビジネスパートナーになる時代

そう言われると節税対策のアドバイスを連想する人もいるでしょう。

もちろん節税は重要なことであり、そのためのアドバイスも怠りません。

しかし、税理士法人はアドバイザーの域を超えて、ビジネスパートナーになる時代がやってきています。

具体的にはクライアントの事業の状態にまで踏み込んで、会計の観点から運営に問題がないか調査するのです。

収益を上げる効率や事業の成長速度を確認したり、費用や資金繰りを調べたりします。

調査をして問題があると判断した場合は、それを改善するための方法を検討しなければなりません。

そしてクライアントと打ち合わせをして、事業を良い方向にシフトさせるための方策を理解してもらいます。

これらのサポートを定期的に実施することにより、廃業せずに済む骨太の事業者へと導いていくのが使命です。

税理士事務所でも上記のようなサポートは不可能ではないでしょう。

しかし税理士事務所の場合、基本的には代表が亡くなると続けにくいなど、長期的なサポートを行う面で不安が残ります。

それに対して税理士法人であれば、他の企業と同様に法人であるため、たとえ代表が亡くなっても存続していくことになります。

人員の規模も大きいのが一般的であるため、しっかりと腰を据えてクライアントをサポートしていけるのです。

また、支店を増やせるのも大きな強みとなっています。

税理士事務所は開業した場所で業務を行うのが一般的ですが、税理法人の場合は条件を満たすことで支店を持つことが可能です。

そのため、クライアントが複数の場所に事業所を所有している場合、支店と連携することによって包括的なサポートを行えます。

税理士に仕事をしてもらうという点は変わりませんし、記帳の代行を依頼するだけなら両者の違いはほとんどないと感じるかもしれません。

しかしビジネスを支援する役割を期待するなら、上記のような差をしっかりと理解しておくのが望ましいです。

最終更新日 2025年6月10日 by vbutam