ニュースキャスターに問われる資質

ニュースキャスターを務める人はごく少数であり、誰でも簡単になれるものではありません。日本ではアナウンサーなどが多く務めますが、諸外国ではジャーナリストなどが行っています。日本のようにただ単に司会として番組を仕切るような形ではなく、ニュースキャスター自身も現場に赴いて活動するのがいわば常識です。

そうしたことから考えると日本の状況は他の国から比べるとあまり健全な状況ではないとも言えますが、長年こうしたスタイルでやってきた以上、なかなか変えることは難しく、気持ちの面でもジャーナリストとしてのものを持っておくことが大事です。

その中でもニュースキャスターに問われる資質としては権力を常に監視する姿勢です。権力者の中には自らの立場がわかっており、権力を振りかざさないようにする人もいます。ところが、恣意的に権力を行使し自分の利益につながるようなことをしてくる人もいるためにそうしたものを監視することも必要です。

こうした姿勢を持っておけば、政権に関するニュースを放送する場合でも自分の言葉で権力を持つ側への批判ができます。そうした姿勢もなく、ただ単にそこに座っているだけの人は思ってもいないことを口にするか、反対に権力に寄り添ったことを言いがちです。

そうしたこともあるため、ニュースキャスターは権力側との距離をしっかりととっておく必要があります。中には自分の利益のために仲良くしようとする人がおり、政権側のコントロールに使われることが考えられます。スピンコントロールと呼ばれ、諸外国では誰もが認知する情報操作のやり方です。

日本ではスピンコントロールという言葉がまだ浸透しておらず、情報番組やニュース番組で紹介される情報が本当しかないと思いがちです。こうしたことに利用される恐れがあるため、権力側と距離を置かないと本人の資質にも大きな影響を与えます。

日本のメディアの特徴

一方でニュース番組の責任者としての覚悟をニュースキャスターになる以上は強く持たないといけません。ニュース番組をやっていると間違いが数多く起こります。間違いの中にはちょっとしたテロップの誤字脱字程度の間違いもありますが、事実誤認をしていたケースや人権侵害に該当するケース、完全な誤報などメディアとして致命的なミスを犯すケースもあります。

こうした時に責任者だからこそしっかりと謝罪をする、もしくは番組をすぐに降板する毅然とした態度が必要です。こうしたことがなかなかできないのが日本のメディアの特徴とも言えます。

アメリカではメディアの中でも思想を鮮明に押し出すところが多い一方でニュースキャスター自身はそうしたものを出さない傾向にあります。以前は個人的な私見を番組で紹介することがあったものの、発言力がとても大きく、とある戦争のレポートにおいて大統領とは違う意見を述べたところ、この状況では再選は難しいと大統領選への出馬を断念するという事案がありました。

これらのことを受けて私見はできるだけ挟まずに中立を保とうとする動きが広まりました。こうした動きの後に日本でも様々なニュース番組がスタートしていきます。

資質を問うとすれば、これまでにどのような取材経験をしてきたかが問われます。そしてありのままの姿を視聴者に報道するのが本来の姿です。このような姿勢は1980年代までのニュース番組ではかなり浸透し、当時ニュースを読んでいた人たちは同様の姿勢を持っていました。

つまり日本でも1980年代、90年代初頭までは全うな気持ちを持ちながら報道を行っていました。今後目指すのであれば、この基準を思い出していく必要があります。できるだけ多くの取材経験と自分で現場を見て回る癖をつけないと務まらないと思ってよさそうです。

報道に携わるために大事なこと

マジメな顔して一般人でも言える私見を述べることがいいのではなく、本質をそらさずに伝えていくことが大事です。ニュースをわかりやすく伝えることが役目と思いがちですが決してそうではありません。むしろそんなことは難しく、わかったつもりにさせることしかできません。

視聴者にはそこまでのことがわからないためにそうしたキャスターを求めがちです。大事なことは常に本質を伝え続けること、そしてそれを強化させるためにデータを持ってくるのではなく、どちらにも公平な報道を務めることが求められます。

ただ個人がどれだけ努力を重ねても、テレビ局の方針などがあってなかなか理想を貫くことは難しいです。しかし、フリーランスのメディアやインターネットメディアが日本でも発展し始めており、自らがこうしたものを立ち上げてその方針に従ってやっていくことは大いに可能です。

そしてそちらの方が健全であり全うであるというのがわかれば、いずれはテレビでもそうした流れになっていきます。「報道に携わりたいのであればまずは正直になることが大事であり、権力と対峙し続ける覚悟を持ちながら仕事をこなしていくことが大事です。」と以前ニュースキャスターをしていた畑恵さんは語っています。

畑恵の記事一覧を参照ください

最終更新日 2025年6月10日 by vbutam